ほとんどの陸上競技はコンディションによって記録が左右されます。その中でも、鴎外競技である陸上競技にとって、風は重要なファクターになります。

短距離走や幅跳びの場合は追い風のときには記録が伸びると言います。実際、大会記録を見てみますと追い風の時がほとんどです。

それでは、円盤投げはどうなのでしょうか。

実は、円盤投げの場合は、向かい風の方が記録は伸びると言われています。

「向かい風だと円盤が空気に押されてしまいそうなのに」
と不思議に思いますよね。

しかし、円盤投げが向かい風の時の方が飛ぶことにはちゃんと物理学的な理由があるのです。それをきちんと理解して利用することで、円盤投げは更に上達することが出来ますよ。


飛んでいる円盤に働く力

円盤は投擲された瞬間、上向きの角度をつけて飛んでいきます。この時の円盤は空気を割いて飛んでいくことによって物理的な力を受けることになります。

それが『空気による抵抗』です。

空気による抵抗と聞くと、一見円盤を飛ばさないようにする力のように感じます。もちろん、円盤の側面に直接あたる空気に関してはそうなのでしょうが、円盤全体にかかってくる空気の抵抗を考えると、結果的に円盤を落ちにくくする力がかかってくるのです。

円盤が上を向いて投げられている時、円盤の前方にある空気は円盤の表面に沿って動いていきます。

円盤に沿って流れていく空気にはコアンダ効果という空気が動いているものに引っ付く効果が働きます。それによって円盤の上部と下部では風の角度が円盤に沿った形に変えられるわけです。

そうすると、飛んでいく円盤の下部では面白いことが起きます。

円盤に沿った空気だけが角度を変えることになるので、円盤の後方では空気が集まることになります。これを収束と呼びますが、この収束が起きることで空気は上向きに力を加え始めるのです。




言ってみれば、天気の上昇気流と同じですね。空気は収束すると逃げ場を求めて上向きの力を持ちます。これを揚力と言います。

この力を利用しているものの代表的なものには飛行機の翼があります。飛行機は離陸時に助走をしますが、その時に翼の背面では円盤投げと同じような揚力が発生して浮かびやすくなるのです。

少し話はそれてしまいましたが、揚力によって円盤は上向きの力(浮力)を得ることができるので、結果的に落ちるまでの時間が伸びるために遠くまで飛ばせることになります。

実際、円盤投げで空気抵抗を考えないモデルでの計算と実際に円盤を投げた場合では、円盤の飛距離は平均で6m以上も変わってくるそうです。

それでは、どの風向きの時が最も揚力を得られるのでしょうか。

そう、向かい風の時です。

正面から多くの風にぶつかることが出来る向かい風の時には、円盤の後方に空気をより多く集目ることが出来、その分たくさんの揚力を得ることが出来るのです。


まとめ

円盤投げにおいて、風は飛距離を決定する重要な要素になります。

円盤投げの時に向かい風が吹いていた場合は、物理的に円盤を落ちにくくする力が働いており、記録を伸ばすチャンスになります。

ここで注意しておきたいことがあります。

それは円盤の角度です。

いかに理想的な向かい風が吹いていたとしても、円盤の角度が高すぎたり低すぎたりすると、円盤を飛ばす力が弱くなってしまいますので注意してください。

また、飛んでいる円盤がぶれていても同じことが言えます。円盤が揺れながら飛んでいく場合は円盤にかかっている回転が弱い証拠ですので改善しましょう。

もし、
「向かい風の時はあまり飛ばない」
と思っている方がいらっしゃったら、上記の2点を確認し修正することで確実に記録を伸ばすことが出来ます。

普段は気が付けなかった問題点にも気づくことが出来ますので、向かい風の時は円盤投げ上達の絶好の機会とも言えるでしょう。