重心移動やリリース後のブロックなど、円盤投げのターンが上達してきましたら、次のステップに進みましょう。
次のステップとは、『徐々にターンのスピードを上げていく』ことです。
円盤投げにおいて、最も重要なキーワードの1つがターンのスピードになります。
ここではターンのスピードがなぜ重要なのか、ターンのスピードを上げる練習方法についてお話をしたいと思います。
Contents
1.円盤投げのターンにスピードが重要な理由
円盤投げのターンのスピードが重要な理由は遠心力にあります。
円盤投げは腕や肩の力で投げるのではなく、この遠心力を利用するために40mも50mも飛ばすことが出来るのです。
では、その遠心力とは何かということを物理的に考えてみましょう。
遠心力は『回転している物体に働く外向きの力』のことで、式にすると次のようになります。
F = mrω^2
(F:遠心力、m:質量、r:中心と物質までの距離、ω:回転スピード)
となります。
つまり、円盤投げで言いますと、
(遠心力) = (円盤の重さ)×(回転の軸の中心から指先までの距離)×(回転のスピード)^2
となります。
円盤の重さは規定で決まっています。
ですので、円盤投げ選手が遠心力を最大に活かすようにするためには
1.回転軸の中心から円盤を持っている指先までの長さをより長くすること
2.ターンの回転スピードをより速くするということ
の2点を強化していく必要があります。
そして、注目していただきたいのが、回転スピードが2乗されている点です。
回転軸から円盤までの距離が1.2mの選手が2kgの円盤を投げる時のことを考えてみます。
Aではリリース時の速度が時速50km、Bではリリース時の速度が60kmであったとすると、
F[A] = 2 (kg) × 1.2(m) × (50000(m)/3600(s)) ^2
= 463.7N
F[B] = 2 (kg) × 1.2(m) × (60000(m)/3600(s)) ^2
=669.3N
となります。
リリース時の速度が10km/h違うだけで、遠心力が3割程度も大きな値になってしまうのです。
遠心力へのスピードの寄与は回転軸から円盤までの距離よりもずっと大きいというのがよく分かると思います。
その回転スピードを速くするためにはターンのスピードを速める必要があります。
2.円盤投げのターンのスピードを上げる練習
円盤投げにターンのスピードが大変重要な役割を果たしているのだということがご理解いただけたのではないかと思います。
それでは、実際にターンのスピードを上げていくにはどういったトレーニングをしていくことが効果的なのでしょうか。
1.筋力トレーニング
素早いターンを回るためにまず必要になってくるのは筋力です。
単にターンを早く回ろうと練習をしても、足腰の筋力が弱いと重心移動が雑になってしまい円盤に上手く力を載せることは出来ません。
また、体幹が出来ていないと、そもそも素早いターンを回っても円盤に振り回されて転倒してしまう恐れがあります。
体幹のトレーニングには基本トレーニングのプランクやメディシンボールを用いた筋トレが適していますし、下半身のトレーニングにはメディシンボールや走り込み、ウエイトトレーニングが効果的です。
詳しい筋トレ方法につきましては、『メディシンボールを用いた円盤投げのトレーニング』『円盤投げが上達するウエイトトレーニング』『円盤投げ初心者におすすめの筋トレメニュー』にまとめてありますのでご覧ください。
2.シャフト
円盤投げのターンのスピードを上げるには、とにかく筋トレをして実戦してみるしかありません。
ですが、実際に素早くターンをしてみると、速さに振り回されて転倒してしまうことがあります。
それを防ぐための基本練習として、メディシンボールに次ぐ円盤投げ選手の相棒、バーベルの柄の部分(シャフト)を用いたトレーニングをご紹介します。
シャフトを用いたトレーニングでは足の瞬発力が鍛えられるほか、体の軸を強く意識できるようになります。
地面に20m程線を引き、シャフトを飛脚のように肩に担いで足を軽く曲げ、線の上を拇子球で素早く回転しながら通ります。
軸がしっかりしていればふらつくことはないでしょう。
線の端まで辿り着きましたら今度は反対方向に回りましょう。
左右の回転で1セットとし、2セット位を目安に行えばよいのではないかと思います。
次に、線の上に足が乗るようにその場で右回り、左回りをタンタタンという円盤投げのステップのリズムで10回程度繰り返してみましょう。
シャフトは10kgと意外に重たいので、スピードを上げると線の上に足が乗りづらくなったり軸がぶれてしまったりということがありますので気を付けて行ってください。
3.ターン練習
ターンのスピードを上げたいと思ったら、いきなりサークルに入って投げるよりもターン練習を行ってからの方が怪我や事故も起こらないので良いと思います。
最初はタオルを持ち、どれくらいのスピードで回れば正しいフォームを崩さずに済むか確認してください。
次に、円盤と同じ重さのメディシンボールを使い、ターン練習をしてみましょう。
円盤と同じように外側に引っ張られますので、スピードを上げれば上げるほど重心移動やバランスが取りづらくなるのが分かると思います。
正しいフォームが保てない場合は、そこが今の筋力の限界なのだと理解して速度を落としてください。
速く回るためには筋力が不可欠。
ですが、筋力が付けばその振り回されてしまっている分の力を円盤に乗せることが出来ますので、それを励みに筋トレを頑張りましょう。
3.円盤投げのターンのスピードを上げる練習方法のまとめ
円盤投げの選手には、小柄な選手もいます。
そういった選手はターンのスピードを武器にしていることが多いです。円盤投げはリーチの差よりも回転のスピードの方が重要だからです。
嬉しいことに、体の軸から円盤までの距離を伸ばすには限界がありますが、回転スピードを上げるのには限界はありません。
ですから、円盤投げの上達に限界を感じている方も、回転スピードをアップできるようにトレーニングをすることでまだまだ伸ばすことが出来るのではないかと思います。
ターンの回転スピードを上げたいと思ったら、筋トレで足腰と体幹をしっかり鍛えてとにかくターン練習を重ねるしかありません。
速度アップに挑戦することで何度も円盤に振り回されて悔しい想いをするかもしれません。ですが、その悔しさをバネに出来る選手は素晴らしく記録を伸ばすことが出来るでしょう。