初心者のための「砲丸投げ」をするために必要なウエイトトレーニングの考え方について記述します。


1.砲丸投げはスピードによって決まります

まずスピード筋力に目を向けましょう。ほんの数種目を除いてスピードを競わないスポーツ競技はありません。

ほとんど全てのスポーツにとって、スピードこそもっとも重要な要素であると断言してもいいくらいです。

決められた距離を移動する時間を競うスポーツでは距離の長短を問わず、スピードの勝負です。

陸上競技、スキー、スケート、ボート、カヌー、自転車とどのスポーツをとっても、地面や水に対してゆっくり作用させる力の大きさやその持久力だけを競う競技種目は一つもありません。

また、ボールゲームや陸上競技の投擲などでは、手からボールや槍や砲丸などがリリースされる瞬間の初速度が重要となります。

そのために下半身から上半身にかけて伝達される力によって生み出される最終的なスピードの増大が課題です。

野球やソフトボールのバッティング、テニスやバドミントンや卓球のスマッシュ、サッカーにおけるボールのキック、バレーボールのサーブやスパイク、ボクシングのパンチや空手の突きや蹴り、剣道の打突等々があります。

ここでもすべて動作のスピードが決め手です。多くのスポーツでは身体全体による身のこなしのスピードが明暗を分けます。

柔道やレスリングの投げや、アメフト、ラグビーのタックルなど一瞬のスピードがなければ勝ち目はありません。

では、これらのスポーツにおいて、特に砲丸投げで大きなスピードを生み出すための筋活動特性とは何でしょうか?


2.最大筋力は役に立たないのです

スプリンターがスパイクの裏をトラック上に叩き付けて力を加えている時間は、およそ0.1秒です。

レベルが高くなるとさらにそれよりも短くなります。

槍投げ選手が槍に投げるための力を加え始めて手から放たれるまでの時間も0.1秒程度です。

砲丸投げでは少し長くなり、およそ0.25秒となります。

跳躍競技では走り高跳びで0.15~0.2秒、バレーボールのスパイクジャンプでは0.2~0.27秒くらいです。




このように、ほとんどのスポーツの重要な局面で力を発揮する時間は0.1~0.3秒までだということは多くの研究結果からすでに明らかです。

このように一瞬にして大きな力を発揮する筋力特性を「爆発的筋力」と呼びます。


3.「爆発的筋力」が必要となります

ガスや火薬や噴霧されたガソリンに引火して一気に燃焼するのが爆発です。

これに対して「最大筋力」というのは時間無制限です。じわじわと力を立ち上げたその最大値が最大筋力です。

あたかも大量の薪に徐々に火が燃え広がって大きな炎となるように筋力はゆっくりと立ち上がります。

ウエイトトレーニングというと最大筋力向上のことだと思っている人がおられたらここでよく考えて下さい。

じわじわと発揮できる最大筋力がいくら大きくても、0.1秒、0.2秒といった極めて短時間に発揮できる筋力が小さくては、いくら大きな力を出す能力があっても実際の競技場面では使われずに終わってしまうのです。

スクワットやベンチプレスの1RM(マックス)の値を最大筋力として捉え、その数値にいつまでもこだわり続けることは、競技場面ではまず使われることのない筋力にこだわっていることになります。

スクワットやベンチプレスの1RM測定とは、一定の姿勢でどれだけの重量を持ち上げることができるかと言う測定です。

ここには、スティッキングポイントと呼ばれる関節角度があり、この箇所を通過できるかどうかで上がるか上がらないかが決まります。

スティッキングポイントで我慢してここをクリアできればあとは何とかなりますが、この箇所を通過するのに4秒くらいかかってしまうことも稀ではありません。

こんなに何秒もかけてやっと持ち上げられる1RMを高めることのみに全エネルギーを費やし、多くのトレーニング時間を注ぎ込むことが、わずか0.1秒しかないスプリントの接地時間や時速140キロのボールを迎え打つ一瞬のバッティングにとってどれほどの意味があるでしょうか?

砲丸投げでは、爆発的筋力即ち瞬発力が重要であることを念頭においてウエイトトレーニングに取り組んでください。

初心者は特に、体力を徐々につけながら、慣れることに専念してください。必ず上達します。